Gangsters 京都大学アメリカンフットボール部


チーム理念

監督 水野彌一

スポーツで強いチームを作る王道は、条件を整える事。
それは優れた選手を集め、環境を整え、コーチングスタッフを充実させることである。
しかし国立大学である京都大学では、私立大学と同じような条件整備はほぼ不可能である。我々の場合は、大学からの物理的支援は練習のためにグラウンドを使わせてもらえるだけである。あとは全て自助努力によるので、全ての条件は決定的に劣っている。その中でも、人材面において望んだ選手を入学させることが全く不可能である、という条件は、求める人材を推薦制度等によって数多く入学させることができる私学との大きな差である。

このような状況は昔もそうであったし、今も変わる所はない。その中で日本最多の4度の全日本一を勝ち取ったのは、人間その気になれば不可能と思われる事も可能になるという事の証左である。

アメリカンフットボールは個人競技ではなくチームスポーツである。技術のウェイトが比較的少ない格闘技である。さらには攻守交替制であるため、戦術が重要であることなども、他スポーツより京大に有利であるだろう。しかしそんな事は決定的な要因ではない。最も大切なのは、やる気なのである。だが、元々困難で厳しい挑戦であるから、それでもやる気になるというのは容易なことではない。肉体的な強さは人によって差があるように、精神・意志の強さにも違いがあるから誰もができる事ではない。

京大生の場合、入学時と比べて体重は1.3倍、筋力は3倍成長するというのは普通であるが、技術はそれ以上に向上する。さらには、精神的な成長は比較にならない。練習によって肉体を鍛え、技術を身に付ける以上に心を強くするのである。

我々は、アメリカンフットボールを楽しめと常々考えている。しかしここで勘違いしてはいけないのは、スポーツを楽しむということと、楽しくスポーツをするということとは全く意味が違うということである。本当に楽しいのはレベルの高いプレーをする事である。そのためには上達する事が大切である。そのためには効率的なやり方が重要となる。しかし初心者にはそれは分からない。やりたいようにやっていたのでは上達は望めない。そこで重要なのが基本である。基本は長い間に培われた、優れた方法論である。だが、技というのはできて初めてわかるものである。繰り返し練習すると体が勝手にやってくれるようになる。そうなると意識を外に向けて行動できるようになる。初めて基本が生きてくるのである。そうすると今までと別次元のプレーができる。そこまでくると自分というものが見えてくる。自主的にやれるようになる。もっと上達したいからより一層練習する、上達するからより一層やる。エスカレートしやめられなくなる。熱中するとかのめり込むというのはこの事で、こうなるとしんどくても辛くても関係ない。本当に楽しい事である。

こうしてやっていてもやがて壁にぶつかる。やってもやっても上手くならない。一方勝つために自分は上達しなければならない。これは大変辛いことである。今この国では良いイメージを持って前向きにチャレンジしようが主流である。しかし志が高ければ高いほど困難も大きいから、成功の見込みの少ないチャレンジはバカのする事というのである。これでは高い志は果たせない。その厳しさに耐えて挑戦し続けなければならない。これは逃げ出したくなる自分との闘いである。この闘いに勝つのは大変難しい。しかし、闘い切る事によって、自分は自分に負けなかったという自信が生まれる。自分には負けないという自信、これがあるから基本的に楽観主義になれるのである。困難な時、厳しい時こそ前向きになることが成功の最大の秘訣ではないだろうか。こんなに価値あるものはない。また、どうすれば壁を破れるかわからなくても、ある時「あ、そうか、これだったんだ」という気付きがあるものである。その時壁は消え、新しい自分、新しい世界がある。よしんばある時点では壁を破れなくても、自分の限界を知ることができる。そうするとその自分をそれなりに生かす知恵が生まれる。より一層向上する意志が生まれる。そのようなありのままの自分を知る成長を通して、謙虚であることの大切さを学ぶことができるのである。

このように自己探求と同時に、チームスポーツの勝利はチームの勝利であることを忘れてはならない。選手は全員チームの勝利に貢献しなければならない。フォアザチーム、チームのために何ができるか、自分をどう生かすか。
貢献の仕方は皆違う。エースQB、オフェンスライン、基本習得中で強い相手との対戦にはまだ出られない者、さらにはマネージャーやトレーナー、監督もコーチも全員がチームの勝利のために存在するわけである。フィールドでは全員が自分の役割を果たす、あいつならやってくれる、あいつは逃げないという信頼があるから、自分のプレーに専念できる。そういう仲間と共にチームの勝利という共通の目標のために共同して努力をすることを通し、真の信頼を築く。このような仲間は一生の財産である。

この他にも学ぶことは数多くあるが、勝つ事を追求して自分というものが見える。そして自分を生かす知恵と自分に負けない自信を得る。これが学生スポーツの最大の意義であろう。

たかがスポーツ、されどスポーツである。

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